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※このサンプルは相談者の許諾を得て公開しています。
【展開】
上段 8 of Discs / The Star / 10 of Discs
中段 Queen of Cups / The Moon / The Chariot
下段 The Fool / Prince of Cups / 4 of Wands
【分析】
中段中央には絵札「月 The Moon」。暗い谷間、恐ろしい神々、光を掲げ水から揚がる甲虫が描かれている。占星術上では魚座が帰属し、自身の無意識領域、それへの眼差しを意味する。中段右にはもう一枚の絵札「戦車 The Chariot」蟹座が帰属し、自我の外郭、ホーム、自己構造化を意味する。中段左には人物カード「杯の女王 Queen of Cups」、元素Water of Waterの気質を持つパーソナリティを表す。
中段の3枚から読み取れることは、自身の「殺意」を問いの主題として選択した相談者の無意識領域が波立ち、動いているということ、同時に、無意識の波立ちを冷静に眼差し、人格全体の動揺に至らないように意識の守りを固めている様子、である。2枚の絵札がともに「水」元素の宮(魚座 / 蟹座)に帰属することから、人物カードQueen of Cupsは、ここでは意識的な人格というよりも、無意識化の複合体 complex として強調されている。自分の中の他者のように感じられる、無意識の女王である。問いを発する相談者の意識は、自身の無意識領域への関心が芽生え、その闇を凝視することを学び始めている。暗さに慣れた意識の目に映るのが、ヴェールの向こう、玉座に鎮座する、曖昧で強力な謎の人物、Queen of Cupsである。
中段下にはもう一枚人物カード「杯の王子 Prince of Cups」、Air of Waterのパーソナリティ。中段右には「4 of Wands」タイトルは「完成 Completion」、牡羊座の金星が帰属する。中段「Queen of Cups」と呼応するように現れた「Prince of Cups」は、猛禽に引かれる戦車に乗り、杯に蛇を携えている。翼、蛇が象徴するのは「智慧」であり、純粋に女性的なQueen of Cupsに男性的な原理「風-思考」が加わり、玉座に鎮座する女王と対照的に、戦車で水面を浮遊する。4 of Wandに帰属する牡羊座は春分点を起点とする「はじまり」の宮であり、男性的、瞬間的、爆発的なエナジー。同じく帰属する金星の特質は「重力」であり、周囲にあるものを自らに引き寄せ、固まろうとする。「外破 explosion / 内破 implosion」の逆向きベクトルが重ね合わされた「4 of Wands」のエナジーを把握するには、恒星をイメージするとよい。巨大な重力源に引かれて質量が中央に引き寄せられ、密度が高まり、エナジー放射が始まる。この札のタイトル「完成 Completion」とは、恒星が爆縮しながら輝いている恒常性 complosion である。中段の「月」と「戦車」、内包される海のうねりと、それを包む堅個な外郭の対比を連想させる。
中段左には絵札「愚者 The Fool」、全22枚の絵札の最初の札で、番号は0。緑色の服を纏った角ある道化師の周りを、孔雀、蝶、鳩、アンクが3重の楕円軌道を描き、愚者の心臓の上でもう1回転を加えている。愚者の足元には獅子と鰐がいて、手には鉱物と、炎のような松笠を携えている。中段中央「月」の下部で、水から揚がりくる甲虫は、ここでは鰐に変容し、より強靭な、緑色の躯体で愚者の身体と一体化している。「月」の甲虫が掲げる光の玉は、ここでは愚者の性器を隠す太陽に変容しており、同じ黄色の獅子が見守っている。「月」の下部に描かれる赤と青のゆらめくパルスは、ここでは緑と黄の円軌道 orbitalとなり、自律し、力強く脈打っている。「愚者」に帰属する元素は「風 air」である。
自身の内なる「殺意」に関心が湧いたとのことだが、中下段から読み取れる心象風景は病的な怒りや澱みではなく、動揺し、揺れ動きながら、完成された円運動に近づき、活性化していく心的エナジーである。中段水の世界に不在する「風」は思考、言語、知的分析であり、それが「月」の暗がりの不安、偽りの危機を恐ろしく演出している。この恐怖は「戦車」の鎧のうちに閉じ込められ、封印されているが、内奥の広く暗い空間には無意識の女王が鎮座し、視線と分析を拒んでいる。これもまた、恐ろしい「内なる他者」のように感じられる。心的複合体 Psychic Complexとは、意識的な自我からある程度分離し、自律的に振る舞う自動機械 Automaton のような心的構造で、病的に肥大すると 自己愛複合体 Narcicistic Complex に成長し、症状化する。しかしQueen of Cupsは受動的で、人格の鎧の内部に確保され封印された暗く静かな宮殿世界に満足しており、ただその威厳を脅かす「視線」を警戒するかのように、ヴェールで顔を隠している。
相談者が「殺意」と呼ぶ衝動は、分析的に検討すれば「怒り」「破壊衝動」「加害衝動」などの複合体ではないか、と推測できる。こうして眼差し、分析し、名付ける「風」の力動もまた、無意識領域の奥から自然に発生していると思われる。密封された内部空間に風が起こるのは奇妙な印象を受けるが、重く中心に引っ張られながらその質量が飽和して放射へと転じる恒星のような自律性-自己組織力が、まさにそのような内的力動を生み出すのは理にかなっている。それは卵の内部の熱力学であり、愚者-風-ゼロ-卵の本質である。自身の知的関心、知的能力の覚醒に従い、Queen of Cupsは息子 Prince of Cupsを産み、内なる海の自由な探索を許している。「月」の暗がりの中では「殺意」と呼ばれたそれは、より複雑な諸要素の構造体であり、最終的にはそれら「ですらないもの」である。言葉はいずれ尽きるからである。愚者の周囲を飛行する円軌道のように、今一度「殺意」という「言葉」に回帰してみると、これらカードの並びが示唆するのは「暗がりの生」であり、「生意」とでも呼ぶようなものの反転像であるかもしれない。古代ギリシャの概念「生気 pneuma」は4元素(火水風地)を統合する第5の元素であり、呼吸、キリスト教神学では「聖霊 holy spirit」に対応する。「愚者」に帰属する風も、4元素内の風というよりは、このpneumaの「息」である。「生気 pneuma」は「性器 phallus」の太陽と、非存在として愚者を包む「胞衣」、ゼロ、卵の界面のセットであり、つまり爆縮する星の放射である。
上段中央には「星 The Star」、風の星座・水瓶座が帰属する。遠くで放射する星のエナジーを、両手の杯から流れる水に、そして結晶へと変換し続ける裸の女が描かれている。上段右には「10 of Discs」、タイトルは「富 wealth」、乙女座の水星が帰属し、元素・地 earthに流入する風 air を表す。上段左には「8 of Discs」、タイトルは「熟慮 Prudence」乙女座の太陽が帰属する。上段3枚に共通するのは「乙女 maiden」であり、Queen - Princeへと受け継がれた変容の次なる展開、統合されたパーソナリティを示唆する。ここでは「地」の元素世界が現れる。身体、物質、言葉の絶えた後の絶え間ない変容の世界である。両隣数札に帰属する「水星」と「太陽」は、下段「愚者」の性器の位置にある太陽の、展開であろう。こうしてみると今回のスプレッドは、美しい対称性をみせている。
【総評】
とりあえず「殺意」と呼んだそれは、よりボキャブラリーと分析思考の円熟によって、さまざまに異なる名前、概念で捉え直されるべき、概念の卵であろう。その卵は恐ろしく、アンタッチャブルな雰囲気を漂わせているが、その雰囲気は言葉の暗がり(ボキャブラリー不足、分析精度の低さ)に由来する「恐怖」であり、同時にその内部で抑えきれない好奇心の爆縮作用 Complosion を起動もしている。卵の内部、あるいはその全体性としてまどろむ「愚者」の目はすでに醒めており、その性器から立ち上る生気-プネウマ-クンダリニーの蛇が頭頂部へと上昇を開始すると、ひとつひとつの「もの」に適切な「名前」を振り分ける「熟慮」の能力が獲得され、卵の内容物は果実、富として、身体的、物質的に顕現する。
全体に「海-卵-星」の推移が示唆されている。月-魚座は「もの」の名前がはっきりしない水の世界であり、星-水瓶座は無限の名前が湧き出る概念の結晶世界である。どちらにも長所と欠点がある。釣り合いのとれた均衡点にあるのは「もの」である。「殺意」と感じられる衝動は確かにあるのだろうが、それは「生意」の反転像でもあろうし、動きたい、ぶつかりたい、という身体衝動や、破壊したい、自閉したいという心的衝動など、より複雑な諸要素に還元される。衝動を抑圧せず、人格の鎧が崩壊しない程度に回流させれば、ジムにいって体を鍛える意欲や仕事のやる気、クリエイティビティなどに変換し、有効活用することも可能だろう。「星」に描かれる乙女が行なっているのは「変換」である。
この変換作用を起動させるのは、まず第一に「風」の力であり、風の力は二つの重層的な意味、言葉と思考の力と、言葉が絶えた後の世界にぼてっと残り息づく生命の力を併せ持つ。言葉・知性の力だけが過剰に働くと、生き生きとした宇宙は干からびた概念結晶の世界、バーチャルリアリティになってしまい、荒々しいプネウマが無軌道に暴れると、怒りや空腹感さえも「殺意」という行動化に直結してしまう。いま行うべきは、内圧と外圧の均衡を模索し、繊細な卵を熟成し、孵化 incubation することだ。孵化は内部から自然に始まるプロセスであり、孵化の後には、恐ろしい無意識の女王は無垢な乙女に変容する。
【おすすめのおまじない】
・紙の辞書を持ち歩く。おまじない、呪物、おまもりとして。
・卵、卵形の石を持つ。
・海の女王と星の乙女を対話させ、意見の対立を楽しむ。
・クタクタになるまで運動する。「死ぬ…!」と思うようなベンチプレスなど。それを習慣化する。
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