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※このサンプルは相談者の許諾を得て公開しています。

【展開】
上段 Knight of Cups / 4 of Wands / Prince of Discs
中段 10 of Swords / 7 of Wands / 10 of Wands
下段 2 of Discs / PEND-The Fool / Art


【分析】

中段中央には数札 棒の7、タイトルは「勇敢 Valour」、獅子座の火星、そして金星の影響を受ける。自意識に関係する獅子座に、積極性、攻撃性を示す火星が入り、やや誇張され、傷つきやすい自尊心を表す。中段左には剣の10「廃墟 Ruin」中段右には棒の10「抑圧 Oppression」が並び、ともに数札10というエナジーの低い札が並ぶ。中段の3枚は棒と剣、ともに男性的なエナジーの札で、なるほど現在時点でなんらかの行き詰まり、エナジー枯渇の様相を見せる。

 

剣の10「廃墟」は、双子座の太陽、語るべき内容を失った虚な言葉、概念、言葉のための言葉、つまり「現実」の「廃墟」としての、言語的に構築された認知フレームである。棒の10「抑圧」は、射手座の土星、遠くに行きたい、高みへと上昇したいというエナジーに、重たい「責任」の土星が乗り、妨げられている状態。中央の棒の7自体には、金星と火星、女性性と男性性の絶妙なバランスがあり、それ自体の魅力や活力が秘められているのだが、両隣の状況が、本来の生き生きとした「女性性と男性性の絶妙なバランス」金星と火星のエナジーを、出口が塞がれたような不活性な状態に置いている。

 

この3枚が描くパーソナリティは、火星の積極性 / 攻撃性と、金星の受容性 / 魅力を併せ持ち、故に葛藤も強い本性が、その葛藤も込みで伸び伸びと、大らかに矛盾しながら発達していくべき道筋を、生育歴あるいは現在の状況が邪魔をしている、ということだ。邪魔をしているのは「エナジー枯渇」つまり疲労であり、相談者が「ループ」と表現する、ある程度長い期間に蓄積した癖のようなものだろう。なぜこの長期的な癖、エナジー枯渇に至るまでの停滞が生まれたのだろうか。相談内容の「愛情を素直に受け取れない」という表現を、金星と火星、獅子座という象徴から分析してみよう。

 

金星と火星は互いに矛盾し、衝突するエナジーである。火星は放射、金星は重力であり、反対方向のベクトルにある。押し付けながら求め、要求しながら反発する、という状態は、火星と金星の「扱い方」を間違えた時に起こる。獅子座は「自意識」のサインなので、ここでは承認欲求と愛情表現に関する、火星と金星のエナジーの扱い方のレッスンが必要となる。この凸凹したパーソナリティは、実はそれ自体は、非常に魅力的かつ精力的な、激しい輝きを放つものでもある。先に述べた「押し付けながら求め / 要求しながら反発する」という描写は、実は非常に魅力的なパーソナリティ像でもあるのである。矛盾は強い魅力にもなり得るのだ。しかし、矛盾すること自体を禁忌したり、恐れたりすれば、本来矛盾して輝きを放つ両極のエナジーは衝突し、中和しあって、動的なエナジーを静止させてしまう。矛盾を禁忌するものは理性であり、剣の10に象徴される「矛盾をよしとしない」故に「本来の生命力を失ってしまう」相談者の受けた教育、思考パターンであろう。一方、火星の男性的で激しいエナジーはそれ自体も抑圧され(棒の10)、もっと求めててもよい場面、もっと攻めてもよい場面で、自動的にブレーキを踏んでしまう癖もついているかも知れない。レッスンは「矛盾を恐れず、むしろ魅力として活用すること」と「我慢しないこと / 自分の積極性-攻撃性を恐れないこと」の、2軸があるはずだ。

 

相談者は、求める気持ちも強い。自分の価値、魅力を主張し、それを他者に承認させることで「受け取ろう」とする。そして、思ったような承認が得られない時に、自尊心の傷つきを感じる。根本的には自信の弱さが、反転して「強く魅力的な自分」を過剰にデフォルメして表現し、それが正しいかどうかを常に他者の反応から伺おうとする。他者は何らかの反応を返してくるが、自分自身が「試し」行動として問いかけているので、他者からの反応も、まず「疑い」によって精査しようとする。強い金星と強い火星がぎこちなく動く時、このようなアンビバレンツに陥る。



ここでネイタルチャートみてみる。火星は6室蠍座にあり、12室牡牛座のパラスと180度で緊張している。金星は12室牡羊座にあり、特にアスペクトをとっていない。全体に水のサイン(魚座-蠍座-蟹座)に天体が集中し、風のサイン(双子座-水瓶座-天秤座)には2室双子座セレス、ひとつだけである。火星(火)と金星(水)のエナジーを調停するはずの風の要素が欠落しており、知的理解、分析的思考、コミュニケーション面での苦手さが、弱点となっている。また水のサインでは二つのグランドトラインが形成されており、非常に強い水のエナジー、すなわち感情、共感、受容性が強調されている。「受け取ることが苦手」という相談内容だが、ネイタルチャートからはむしろ、過剰な受容性、情緒性が読み取れる。つまり「受け取ることが苦手」なのは、調停され安定しない男性性、火星のエナジーの過剰さ、暴走に起因し「試すように求める」というストレスフルな状態を導いているのであって、本来的には「過剰に受け取りやすい」性質が、隠されている。「怒りは表出できるが、悲しみは隠してしまう」という問題も、過剰な火星のエナジー(怒り)が、本来的な受容・感能力を恐れ、反発することに起因する。

 

怒りと悲しみは、同じ心的エナジーである。外に向かえば怒りに、内に向かえば悲しみになる。悲しむということは受け取るということであり、自分が求めるものや他者から差し出された愛情を「受け取れない」こととも関係する。なぜ「悲しめない」「受け取れない」かというと、なにか「悲しんではいけない」「受け取ってはいけない」というアンカーを刻んだ出来事が生育史にあるのかも知れないし、先述した「自信がない」ゆえに「強さを偽装し」「他者の反応を確かめる」という行動パターンにも起因するだろう。そのように起きている心的機微を、分析的に、理性的に、思考ではっきりと捉え、対処法を検討する「風」のエナジーが、不足している。

 

本来非常に強力な素質としてある共感力、感応力、豊かな情緒が、分析的な思考を「めんどうくさく」感じて遠ざけてしまう、というマイナス面もあるかも知れないが、隠された情動を直視し、それを恐れるのではなく「よいもの」として自ら受容すれば、それは類い稀な才能にもなる。一つ目の水のグランドトラインは「蠍座火星-蟹座月-魚座水星」であり、これら個人天体の水のグランドトラインは、幼少期から発現し、馴染み深いもの、またそれ故に抑圧された側面であろう。月は欠如、不安を象徴し、3室蟹座の月は家にいながらなんとなく居場所がないような、自分のテリトリー、バウンダリーを実感できなかった幼少期と、それに起因する対人不安を表すかも知れない。この欠如感、不安感が、反転して他者からのまなざし、承認を「試すように要求する」行動をトリガーしているようだ。その衝動は水星と火星によって、ある意味非常に巧妙に、狡猾に運用されてきて、一種の「得意技」になってしまっていて、故に「ループ」を感じる。惜しいところである。

 

もうひとつの水のグランドトラインがある。「蟹座木星-蠍座海王星-魚座カイロン-セレナ」である。このグランドトラインは「魂の癒し手」カイロンと、「月の高次元的側面」セレナによってトリガーされるもので、もしかしたら未だ発現していないものかも知れない。この癒しと啓明のグランドトラインは、然るべき時が来て、他者から、外部からの働きかけがあって「起動」する。今こうして、タロットリーディングにヒントを求めるところまで、問題が意識化されて、そして気づいていくグランドトラインだ。キーワードは「癒し」である。自らを癒すということは、癒しを受け取るということであり、先述の「悲しみ」を「受け取る」ことにも通じる。他者から差し出された行為や愛情、またコンサートなど自分が求め楽しんでいるはずの好ましい時間も、完全にリラックスして受け取り切ることができないのは、自らを癒し、自ら悲しむことを、禁じられているからだろう。つまり、より意識的に自らを「癒す」ことに取り組めば、「悲しみを受け取る」力も発達し、そこから愛情や好奇を「疑いなく」受け取る力も伸びてくる。

 

このレッスンを邪魔しているのは、過剰な火星のエナジーである。火星は12室パラスと180度で対立している。パラスは「男性性との兼ね合いのなかで発揮される女性性」を象徴し、いわゆる良妻賢母的な、男性とのパートナーシップを象徴する。比較的豊かで、物質的な価値観の強い母親像に反発し、内向的、空想的に、自分の心の世界、暗い領域を探究してきた、という経緯があるかも知れない。火星を含むグランドトラインと牡牛座パラスをあわせればカイトという複合アスペクトともとれるので、「良妻賢母」と聞いた時に自分の中に湧き起こる反応、嫌悪感や憧れ感などを、つぶさに観察し、それをそのままに直視することが肝要であろう。



スプレッドに戻る。下段中央にはまず「保留」の札がでて、追加で置かれた札は「愚者 The Fool」。下段左には円盤の2「変化 Change」、下段右には「技 Art」が並ぶ。保留札と絵札2枚が並び、現在無意識化、潜在的状況としては変化を求め、それを起動するエナジーが十分に高まりつつある。「技 Art」は射手座に対応し、垂直の上昇力と、錬金術的両性具有性を象徴する。中段右・棒の10「抑圧」に乗っていた土星の重みは、いよいよ不要のもの、これ以上耐えられないものとして、跳ね除けられようとしている。また「愚者」は、中段に現れた「虚な言葉」「我慢」つまりは「大人っぽい身のわきまえ」「(偽装された)ものわかりの良さ」に反発し、子供っぽく、のびのびと矛盾して、愚かで楽しいことに突き進んでいく、潜在的な自己像である。愚者は誰の承認も必要なく、愚かで、魅力的だ。中段中央・棒の7「勇敢」が示す、自信のなさ故に装飾し、装飾の完璧さを他者に問いながら、その反応を疑う「偽の自尊心」とは真逆のものだ。

 

上段中央には棒の4「完成 Completion」。牡羊座の金星、そして木星の影響を受ける。ネイタルチャートの金星も12室牡羊座にある。偽の自尊心を破壊し、矛盾しながら伸び伸びと垂直上昇する愚者は、誰の承認も必要としない、それ自身から発する魅力・重力・自信を、完成させている。上段左にはKnight of Cups, 上段右にはPrince of Discsと、2枚の人物カード、共に男性が描かれている。これらは父親、配偶者、子供などと読んでもいいが、相談者自身のパーソナリティの諸側面、とみてもよい。そう見るならば、上段に強調される「男性性」とは、完成し成熟した男性性であり、本来の才能である水の感応力と、冷静な意識によって補填される風の思考・分析力によってバランスされた、新しい自己像である。

 

【総評】
現在の疲弊、困惑は、過剰な男性性(火・火星)のエナジーのアンバランスさに起因する。そうなった理由というのは生育史的なものもあるかも知れないが、重要なのは今ここでそれに気づき、思考に捉え、理解することだ。愛情を受け取れないことと悲しめないことは同じ現象であり、処方箋は「癒し」を意識的に体験すること。そこから「悲しみ」を味わう、本来もった水のグランドトラインの強いエナジーがよい特質として発達する。あるいは、それを阻害していたもの(例えば自信のなさに起因する試し行動、居場所のなさに起因する虚栄心)が、穏やかに後退していく。本来、感じやすく、感動屋で、涙もろく、受け身で女性的な自分の側面を、なぜ「それではだめだ」と禁じるようになったのかを吟味し、「それでいいのだ、それこそが才能だ」と価値転換を行うことが、次のステップだろう。

ブレイクスルーのヒントは、「矛盾」と「愚かさ」である。のびのびと矛盾し、明るく愚かであること。そのエナジーのタップをひらけば、長年抑圧された上昇力が解放され、ループの外に飛び出た新しい時代、季節へと勢いよく突入していくであろう。女性でありながら男性的なエナジーのアンバランスによって、本来の特性である水のグランドトラインを抑圧してきた相談者は、矛盾し愚かで極めて魅力的な新しい自己像に至った後も、不思議な男性性の香り、中性的な魅力を讃えている。自分の内なる、抑圧された女性性を許し、受け取り、解放してやると、かっこいいイケメンの自分が現れる。これも「矛盾」であり、それがとても魅力的であること、つまり誰に承認を要求することなく、誰もが魅了される輝き、重力である。それが手に入ったと感じられた時、この旅は終わる。

 

【おすすめのおまじない】
・恐れて不安でガタガタ震えている自分を眼前に想像し、対話する。何が一番いやか。なぜか。どうすればいいか。話し合って、どうするか決める。
・強運で楽観的な自分を眼前に想像し、アドバイスを乞う。なにが欲しいのか、なぜ大丈夫なのか、どうすればいいか。話し合って、どうするか決める。
・地球から月へ、月から太陽へと上昇していく様子を想像する。長風呂しながら。途中で集中力が途切れて、なかなか太陽まで辿り着けないだろう。1ヶ月から数ヶ月かけて練習する。
・自分の中の魔女をあやす。ご褒美をあげる。甘いものや享楽で気を引く。


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