中段中央には9 of Wands、タイトルは「強さ Strength」。アツィルトの月、射手座の月を表すこのカードは、「芽生えてきた意志」あるいは「不安とともにある意志」を含意する。現在の職場に甘んじるか、去るかを検討しているのだから、それはそうだろう。「強さ Strength」というタイトルとは裏腹に、ここで強調されているのは月の側面、か細さと不安である。ここでいう「強さ」とは、奮い起こされた勇気、痩せ我慢、不安と意志に引き裂かれる緊張状態である。
中段左には8 of Cups、魚座の土星、タイトル「怠惰 Indolence」、中段右には人物カード「Queen of Cups」Water of Water。この2枚は中央の「強さ」に、不活性な、受け身の状態というニュアンスを加える。現職に留まるか、新たな可能性を求めて動き出すか、方向性として今どちらが良さそうかは、この後より詳細に分析していくが、ここで一度考えておくべきは、自分の恐れを直視することだ。不満と不安があり、それを打ち破ろうと振り絞られた意志、勇気がある。では、留まるのが不安なのか、行動するのか不安なのか、それを見極めよう、ということだ。最終的な選択はどちらでも構わない。しかし、何を恐れ、何に抗うか、その方向性を見誤ってはいけない。特に今、エナジー的には不活性な、受け身の状態にある。ここから、か細い勇気を、狙いを定めて射放っていこうとしている。どうしても放とうとする矢の先を見ようとしてしまうが、まず大切なのは足元、自分が最も見たくないもの、恐ろしいもの、いやなもの、を見極めることである。ここに迷いや虚偽があってはいけない。
下段中央には人物カード Prince of Wands、Air of Fireが、下段左 2 of Wands、牡羊座の火星、タイトル「支配 Dominion」と、下段右 5 of Cups、蠍座の火星、タイトル「失望 Disappontment」に並んでいる。男性的な、積極的なエナジーの高まりが強調されている。5 of Cups は水の元素、女性的要素を表すが、蠍座にその支配星である火星が入っており、やはり火星の積極的・攻撃的なエナジーが強調されている。
中段中央 9 of Wandsには、下端に月、上端に太陽を備えた杖 Wandが描かれている。月の不安と太陽の自信のテンションが表現されているが、この札が帰属する射手座は、上昇するエナジーを象徴する。テンションによってしばし膠着状態にあっても、少しづつ、振り絞るように、上昇は続く。そしてその下、下段の3枚は、強調される火星の積極的なエナジー、男性的な活力が、蓋をされた熱湯のように沸き立っている。意外と元気ではあるようだ。あるいは、怒りのエナジーが強いのかもしれない。なんにせよ、不活性な状態を打ち破るのに十分なエナジー -快活な行動力であれ、破壊的な怒りであれ - は、溜め込まれているようだ。
上段中央には人物カード「Prince of Swords」、Air of Airで、中段右の人物カード「Queen of Cups」Water of Waterと好対照だ。風の元素、思考のエナジー、素早く軽く動くもの、を象徴し、上段左 9 of Discs、乙女座の金星、タイトル「利益 Gain」と、上段右 6 of Wands、獅子座の木星、タイトル「勝利 Victory」に並んでいる。下段に溜め込まれたエナジーを放出し、上昇運動が始まると、結局のところは「意志の勝利」のようなもの、成果や報酬のようなものが得られている、とみえる。とすると、なぜ現状「不活性」で「受け身」で「不安」なのか、ということが考察のポイントとなる。
太陽は牡羊座8度、下段左 2 of Wands が帰属する領域で、牡羊座の支配星・火星がいる最初の10度区分にある。月は双子座21度にあり、ドラゴンテールと約1度で合、水瓶座22度金星と射手座22度ドラゴンヘッドとともにメディエーションという複合アスペクトを形成している。ドラゴンヘッド/ドラゴンテール軸は「今世の課題/前世からの継承」を象徴し、月は不安の根源、安らげる闇を象徴する。留まるか離職するかで揺れる、その不安の根源は、根の深い深層心理的な要因があるようだ。幼少期からの自分の行動、性格をレビューして、今置かれている状況と共通する点はないか、検討してみるのがいいだろう。それは水瓶座の金星の影響を受け、怖いけど面白い、という知的興奮、好奇心を掻き立てるはずだ。
他にぱっと目につくアスペクトとしては、水瓶座11度リリスと天秤座11度ヴェスタ、という小惑星同士の120度、そして牡羊座19度カイロンと射手座19度海王星、がある。ここまで全て120度と60度であり、調和的なアスペクトだ。いわゆるハードアスペクトが目立たないので、基本的に心的葛藤やどうにもならない窮地に陥ることなどは少なそうな、なぜかなんとなかってきた的なネイタルである。であるなら、プログレスチャートを見て「今この時期に何が起きているか」を検討していくのがいいだろうが、その前にもう少し、ネイタルチャートに現れているパーソナリティを確認していこう。
5室双子座に月、火星、土星とドラゴンテールがあり、ステリウムとなっている。自信を持ち、人生を一種の遊びと捉えて悠々と楽しむことができる・そうしたいという衝動に突き動かされる・それ故に葛藤する、というパーソナリティが伺える。この「遊び」とは、対話である。社会的な事業とか、歴史的に大きなプロジェクトではなく、「わたしとあなた」の対話によって、自分の人生を刻んでいくことに喜びを見出す。天職といえばカウンセラーであり、その近似としてコンサルタントとも言えるだろう。本来なら心理職がまさに適職と言える資質を持っているのだが、コンサルという職種を選び、そして今葛藤している、という点についてヒントを感じる。「わたし」は「あなた」と語らいたいのだが、今のコンサル職は、そうではない要素が求められる。であるなら、なるべく「わたしとあなた」に引き寄せる仕事スタイル、というものが、可能なのか不可能なのか、は検討に値するだろう。
コンサル職ということで水星をみてみると、2室魚座にある。「わたしとあなた」の対話にあると述べたが、その起点はあくまで「わたし」である。わたしの経験から語り、それがあなたの役にたつなら、というのが本来のスタイルだろう。今葛藤、困難を感じているとすれば、この「わたし」の経験、知識から語り始めること、が阻害されているのかも知れない。この「わたし」の知識とは、意外と夢見的な、深層心理学やオカルティズムの領域である。人文的な語りが活かせない時に、困難を感じるのかも知れない。
金星は1室水瓶座にあり、やはり「わたし」を通じて得た深層心理的・人文的・霊的な知識を、誰かに語る・共有することが、今世の自分でやるべきこと、くらいの好き加減である。ITもまぁそういう側面はあるが、先に述べたように本来的には心理職向きなのではないか。ITもまぁそうだ、というのは、インターネットやVRなどがまさに人間の「心の拡張」に関する技術であるからで、結局は「語らい」の技術であるからだ。風の星座(双子座-天秤座-水瓶座)に多く惑星が集まるネイタルチャートなので、ITなど先端技術、そして忘れてはならないのが、人文、スピリチュアリズムという要素だ。留まるにせよ離職するにせよ、自分の適正として風の要素 - 対話、経験値、夢見 - の要素を、どれだけ充足させられるか、させられないかが、インジケーターとなるだろう。
プログレスをみてみる。今年⚪︎月に転職したということで、その時期をみてみると、0度で重なるのがネイタル1室水瓶座リリスとプログレスのドラゴンヘッドだ。ネイタルで不安の根源・月が重なってるドラゴンテールの反対側、「今世の課題」を表すドラゴンヘッドが、ネイタル1室水瓶座リリスと重なっている。リリスは「魔女」の星であり、水瓶座という広く世界・世間との関わりのなかで、善悪を超えた「欲望」の扱い方に関係する。今回の転職は、何か自分の中の女性ならではの「課題」、エゴイズムやご都合主義、みたいなものと直面する、という意味があるのかも知れない。
ネイタル牡牛座28度アストラエとプログレス太陽も合となっている。アストラエは、私の言い方では「宇宙コンピュータ」であり、そこにアイデンティティの中核を示す太陽が重なっている。どうも、この転職は、宇宙コンピュータの計算上正しいものであり、自らそれを意志したもの、であるようだ。その他のネイタル-プログレス間のアスペクトも、調和的な60度が目につく。ネイタル双子座17度火星とプログレス獅子座土星、ネイタル水瓶座11度リリスとプログレス牡羊座金星など。今現在、自分の適正を活かせないと感じられているが、転職のタイミングでみれば、全体に調和的に見える。
つまり、ネイタルとプログレスをみたところ、現在の「葛藤」「不活性」「不安」の原因は、ドラゴンヘッドに刺激されたネイタルのリリス - 魔女的な、エゴイスティックで、放埒な、とにかく享楽を求める衝動 - を、いかにコントロールするか、という今世の課題として現れている、と分析できる。
今現在、確かにエナジーは低下し、不安と逃避、不活性な状態に陥ってはいる。しかし、潜在的には牡羊座本来の火星的エナジー - 積極性であれ、怒りであれ - は枯渇することなく、強く脈打っている。この潜在的なエナジーをうまく上昇気流に乗せれば、そこには金銭的な利益 (9 of Discs)と、自己実現の満足感 (6 of Wands)があり、現状維持に微睡むQueen of Cupsは忙しく活動的なPrince of Swordsへと変容する。
変容の鍵は、自分の苦手意識の克服にある。評価が低く、試用期間が延長され、プライドは傷ついたが、転職のタイミングをチャートから見る限り、そこには「宇宙コンピュータ」が弾きだした正解と、それを選択した意志、そして調和的な惑星の配置がある。
自分の適正を鑑みれば、「わたしとあなた」の語らい、楽観的で、幾分か神秘的で、クスクスと笑い合うようなコミュニケーション、一切は遊びである、という要素を引き出すことが、現職に留まるにせよ、転職するにせよ、キーとなる。なにかVRとか、いっそ心理職とか、そういう方向に飛躍するチャンスがあればそれでもいいが、しかし宇宙コンピュータが弾き出した今の職場で、それがどのように可能であるか、自分の苦手意識、今世のうちに克服したい課題とあわせて、検討してみるのも一興だ。
非常に複雑で繊細なリーディング結果であるが、最初に取り組むべきは「今自分が恐れているものはなにか」を、徹底的に直視することだろう。収入が減ることなのか、安定した生活を手放すことなのか、プライドの傷つきなのか、怠惰な自分なのか。自分にとってもっとも見たくないこと、直面したくないこと、恐れること、不安なことをまず見極め、その反対方向に矢を放てば、それが垂直の上昇軸だ。それは現職で踏ん張った上での返り咲きかも知れないし、心理職、カウンセリング、なんなら占いなど、自分の強運と楽観を活かす新境地かも知れない。まぁどちらでも、同じことだろう。
・恐れて不安でガタガタ震えている自分を眼前に想像し、対話する。何が一番いやか。なぜか。どうすればいいか。話し合って、どうするか決める。
・強運で楽観的な自分を眼前に想像し、アドバイスを乞う。なにが欲しいのか、なぜ大丈夫なのか、どうすればいいか。話し合って、どうするか決める。
・地球から月へ、月から太陽へと上昇していく様子を想像する。長風呂しながら。途中で集中力が途切れて、なかなか太陽まで辿り着けないだろう。1ヶ月から数ヶ月かけて練習する。
・自分の中の魔女をあやす。ご褒美をあげる。甘いものや享楽で気を引く。