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About Contemporary Magick, 現代魔術について

光の蛇

The Serpent Of Light [2012]

 


 某所でヨガにおけるクンダリニーワークと西洋魔術における身体訓練「中央の柱Middle Pillar」の関連性についての話題がのぼり、独自に開発し長年親しんでいる個人的ルーティンがなんらかのヒントとなり得るかと思い当たったのでここに記す。

 要点としては「中央の柱」における「光」の感覚、ヨガにおけるバンダ(締め付け)とスシュムナー(チャクラを結ぶプラーナの経路)の感覚を、土方巽、大野一雄、笠井叡に連なる舞踏の系譜に保持される身体-イメージ操作法のもとに統合した訓練ルーティンであり、いかなる象徴言語体系、あまたある神秘的身体観にも依拠せず、(想像力を含めた)純粋な体術としてパッケージされたもの、ということだ。つまり、ここではLVXの薔薇十字もチャクラに投影されるヤントラ図像もなく、「明るさ」「熱感」「圧力」といったミニマルな要素に還元された身体エネルギー論が展開されつつも、同時に西洋魔術的身体、ヨーガ的身体、舞踏的身体の「体感」のエッセンスが抽出・凝縮されている。このルーティンに習熟するのみではクンダリニーの上昇や悟りなどの神秘体験が得られる訳ではないが、しなやかで高圧力に耐え得るバッテリーとしての背骨と、その回路に迸る生命エナジーの感得、そしてそのダンサブルな表現を増強するものであり、それが何の役に立つのかと問われれば、、、その回答はウィトゲンシュタインの「語りえないものへの沈黙」の流儀に倣い、読者自身の思索と体験に委ねるのみである。

暗中模索、試行錯誤の鈍愚の航路を照らし導いてくれた我が3人の師に捧げる。See what happens & Enjoy.



(注記:心臓病など疾患を持つ人は実践にあたり医師と相談すること。実践によるいかなる疾患負傷に関しても筆者は一切責任を負わない旨確認した上で自己責任において実践されたし。)

 


 

光の蛇 The Serpent of Light

 

■光の下降

1.足は肩幅で直立し気息を整える

2.目を閉じ、頭上遥か上空が一面の明るい白色光で満ち輝いている様を想像する。(※1)

3.吸気しながら指先を伸ばした両手を左右一杯の弧を描きながら頭上へ伸ばす。 まっすぐなバンザイのポーズで息止めて一端キープ。指先、頭頂を細い糸でまっすぐに吊られる感じで、キープしたところからさらにもう一息吸気、踵あげ背伸びでキープ 背伸びと同時に頭上が一層明るくなるイメージ。


4.ゆっくり呼気とともに両手人差し指親指で三角形をつくり眉間に降ろし、息は吐ききらずここで一度キープ。 眉間の奥、松果体の位置に光源をイメージし「体内が明るい」イメージ。かすかな熱感。

5.残した息をゆっくり呼気しながら三角形を下向きにして性器の位置まで降ろし、僅かに息を残してキープ。 会陰部で「体内が明るい」イメージ。熱感。

6.そのまま息をゆっくり長く吐ききり、手は両側でリラックス。肩腕指先胸骨骨盤を重力に任せリラックスした状態で直立。足下遥か地球の中心に赤みを帯びた明るさと熱感をイメージ。


■蛇の上昇

7.息を吐ききった状態をキープしたまま肛門をバンダ(締める)。尻穴のひだを体の内側に巻き込み、背骨を通して頭頂からでた糸でそっと引っ張りあげる感じ。


8.自然な吸気とともに性器が暖かくなるイメージ 尿を止める要領で性器を軽くバンダ。バンダを解かずに息だけストンと吐ききってリラックス&キープ。(※2)

9.再び自然な吸気とともに下腹部の筋肉を微かに締めて骨盤を掴み、骨盤を前後左右の水平をとって丹田の一点をバンダ 。定まったらバンダを解かずに息だけストンと吐ききってリラックス&キープ。

10.再び自然な吸気とともに横隔膜を引き下げて丹田に息を入れる。楽にいっぱい入れきったら喉を軽く閉じ、息を止めたまま背骨を通って頭頂に抜けている糸で横隔膜を引き上げ胸骨を開き胸をバンダ。胸の中心から熱感が喉の奥と涙腺を刺激し緩む感じ。暖かく優しい感覚を味わい、バンダを解かず(横隔膜を下げず)息をストンと吐いてリラックス&キープ。

11.息を吐ききった状態のまま喉を顎を胸に付けるようにいて喉を押しつぶし、喉の気道が塞がれた状態をキープしながら(顎を引きながら)再び頭を起こしつつ横隔膜を降ろして喉をバンダ。重力で引き下げられる身体各部と横隔膜、バンダで締め上げられる背骨のテンションで、体内の真空が引き延ばされる感じを味わう。(※3)

12.適当な頃合いで喉のバンダを微かに緩め、喉の頸骨側奥を伝う細い吸気とともに、胸骨から上の背骨、頸骨、頭頂部をさらに真上に伸ばし耳の穴を開いて、息を松果体の位置まで入れる。息が入りきったところで眉間が内側にめりこむようなイメージで眉間をバンダ。

13.そのまま可能な限りキープ。頭頂からでている糸が遥か上空にまで伸び、遠く成層圏を吹く風に心地よく揺れているイメージ。

14.両手を体側に沿って腰、胸、頭上へと持ち上げながら(※4)、足の下地球の中心から艶かしい熱感が足、尾てい骨、背骨、頸骨、松果体に伝って蛇のように絡まりながらゆっくり上昇し、頭頂部から抜け出て頭上30cmの空中でとぐろをまくイメージ。呼気とともにとぐろを巻いた蛇が糸を伝って天上の光のなかに昇り消えていくイメージ。

15.伸びをして体をほぐしリラックス、またはシャバアーサナ(死体のポーズ)。以上で1セット完了。

(※1) この感覚の習熟には、目を閉じて部屋の照明を付けたり消したりして感覚を味わう、また目を閉じて額や体の各部位に懐中電灯を照らすなどの稽古が有効である。



(※2)肛門、横隔膜、喉以外の部位で「バンダ」と指示されているものは、微かで自然な筋肉の締め付けを伴うものの、肉体よりもややEthericな、微細体Subtle Bodyにおけるチャクラのバンダを指す。胸に関しては胸骨の位置を固める肉体的バンダと、アナーハタチャクラのEthericなバンダの混合となる。微細な感覚によるチャクラのバンダは、カメラの絞り羽、あるいは肛門括約筋の締め付けや閉じる気孔のようなイメージを各チャクラ位置に視覚化することも助けとなる。

(※3)この時やや苦しいが喉はしっかりとバンダされているので息は通らない。酸欠による意識の瞬間的なブラックアウト、転倒・負傷の危険があるので、自身の習熟度に併せて度を超さない加減を調整する。

(※4)体を包み込むようにそれぞれの手で反対側の体側を沿わせる。つまり「シャツを脱ぐように」両手を上げていき、最終的にバレェのアン・オーEn hautのかたちとなる。


■解説 

この身体訓練法は、西洋魔術に於ける「光」を視覚化し体幹へ降ろす「中央の柱MIddle Pillar」のイメージ行法と、ヨーガに於ける下から順にチャクラを締めあげていくバンダの身体行法を組み合わせたルーティンとして設計されている。背骨を通る光の通路、個別のチャクラのバンダの感覚、バンダによって背骨の圧力を高めていく感覚に習熟することによって、蛇としてイメージされるエナジーが一種の官能性、恍惚感を伴いながら天上の光へと上昇していく体感をつくりあげ、圧力を高めた身体エナジー(クンダリニー)を上昇させる強健な背骨の路(スシュムナー)を開発することを目的とする。

10.の感情の揺れを伴う熱感、11.の「息を吐いた状態でのバンダ」と12の内耳拡張、松果体への集中の段階で、軽いめまい、内耳圧・眼圧の変化、頭痛のような熱感、圧力を感じる場合がある。こういった感覚はクンダリーニヨーガ実践において報告されるものと類似しているが、このルーティンでは深い瞑想やイメージへの集中に頼らずより簡潔な身体操作の手順によって、速やかかつ穏やかに同等の身体感覚・意識変容を促す。しかしながらめまいや酸欠によるブラックアウトと転倒はほとんどなす術ない程に突然に起こるので、無理をせず、安全への注意は万全でなければならない。

 このルーティンにはハタヨガ、中央の柱を代表とする西洋エナジーワーク、そして舞踏の身体イメージ操作のテクニックが統合されている。すなわち実践者は自身の専門領域に留まらず、ヨガ、エナジーワーク、ダンスの訓練に広く親しむことで、この技法のより深い理解と自身による技法拡張の機会が得られる。

 

 

 

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