[2013]
東京大阪に自身のサロンを持つヒーラー・谷崎「るみたん」榴美女史と、文藝賞授賞作品「メイドインジャパン」「世界がはじまる朝」で知られる作家・黒田晶女史による、イケてる「第4世代」魔女ユニットR.A.M.I.P.A.S.(*1)について。
両女史とは某結社夏至儀式及び小会合で初対面後なにかと意気投合&茶飲み陰謀話を重ねてきた。彼女たちの背景としてのガードナーからネオペイガンへの現代魔女宗の流れ、黄金の夜明け団からクロウリーそしてケイオスへの西洋儀式魔術の流れを踏まえつつ、自身の体験と実践から独自の視点と方向性を確立している彼女たちの才覚は、日本語圏におけるこの分野の重大なLost in translationを直感的に解読し、さらにTranslationを超えたCreationへと文化的状況を前進させる極めてパワフルかつ真摯なものだ。
アイコンとしての「魔女」が含む様々な要素を「正統/不純物」に分離することなく包括的に受け入れ、その根源に普遍的に蠢く力動に直接的にアクセスし得る「現在的で、故に真正な」シジルとしての21世紀日本の魔女アイコンをリデザイン/リノベーションするR.A.M.I.P.A.S.の意志は、前述のGD/クロウリー/ウィッチクラフトの近現代オカルティズムの文脈に加えダダ/シュルレアリスム/シミュレーショニズムの美学史、シチュエーショニズム/存在論的アナーキーのサイバーアクティヴィズムの流れを一本の急流へと再統合し、アキバと原発と21世紀日本のプラトーを駆け抜ける不可視の五十鈴ミルキーウェイとしてまばゆくキラめく精神潮流を生み出しつつある。(*2)
R.A.M.I.P.A.S.の標榜する「第4世代魔女」とは、「第1世代:古代シャーマニズム/アニミズム」「第2世代:キリスト教世界における対抗宗教」「第3世代:ルネサンスとしてのネオペイガン」に呼応するもので、その定義は本質的には来る「第5世代」の慧眼に委ねられるべきものだろう。彼女たち自身の言葉によれば、それは「Either / Or」ではなく「Both / And」のアイデンティティであり、そこでは少女時代に胸踊らせた「らみぱすらみぱするるるるる~♪」(*3)が時代の霊智Gnosisにダイレクトアクセスするマントラとして鳴り響く。様々な時代にそれぞれの意匠を纏って噴出していた女性的霊智の泉を、時間的にも空間的にも外部にではなく現在という内部の森の中に再び見い出し、その精髄Elixcirを汲みだす自身の呪文と儀式を創造する。
再び彼女たち自身の言葉を引けば、それは「夢から醒める魔法」である。なにから醒めるのか? そこには重層的な「夢」を個別に指摘することができるが、例えばそれは視得ざる原発利権の暴力統治を基盤とした「戦後高度成長」とそこから垂れ流されてきた繁栄という幻覚、魔術的想像力、創造力にかけられた「中ニ病」(*4)という呪い、幕末開国以来継続され情報環境の爆発的進化によって窓穴を穿たれた言語的錯誤の檻、それらが東日本大震災によってメルトダウンした「痛ましい好機」を機敏にして逃さず、手製の海賊船(無登録/女の子仕様)でシンクロニシティの外海流に漕ぎ出し、ついには「あなたは孤独で無力である」「あなたの魔法は無効である」というFinal Nightmareを内破する企みであろう。 海賊旗には乳房と闇の谷、母なる野獣の鋭く尖った八重歯に支えられた神鏡の図案にルーン文字で"Awake, Despell, DIY"ないし"Kawaii is Numinous"というモットーが記されている筈だ。
2011年5月22日に東京・六本木Indigo(*5)にて開催された「魔女集会」- "Wiccpot"の様子は、Ustreamでの配信で多くの人が目撃しただろう。(*6) 現場で行われた榴美たん書き下ろし儀式では、4方向に着席した参列者の一人一人の耳元に榴美たんが「想起せよ」から始まる4元素の即興詩を囁いた。それは勿論、R.A.M.I.P.A.S.公式サイトで公開されている式次第には載っていない、その時間その場所、その人だけの秘密の啓示なのだ。その官能的で催眠的なイメージ喚起の魔法を体験する幸運は、メルトダウンした「リアリティ」の風穴を通じて、全ての「あなた」に開かれている。
ぽろりもあるよ!
(*1)
その意味するところは一説によれば "Rumitaniac Akiranian Majo Interface and Protocol of Anarcho Spectacle" であるとされるが、定説はない
(*2)
http://twitter.com/#!/uneuneco/status/72550647702102016
(*3)
漫画及びテレビアニメ「ひみつのアッコちゃん」で、アッコちゃんが変身を「解く」時の呪文
http://ja.wikipedia.org/wiki/ひみつのアッコちゃん
(*4)
90年代初頭から311まで継続したこの閉塞状況とその内破を描ききった滝本竜彦「ムーの少年」も必読。
(*5)
http://indigo-staff.blogspot.com/
ここはネバダの巨大&壮絶アートフェスBurning Manの日本エージェントのたまり場でもあり、この偶然の必然においてもオカルティズムとアクティヴィズムのLost in translationは補完されている訳である。
(*6)
https://www.youtube.com/watch?v=Mvzz266QUXk
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