Chaos Vision ML [2003]
ANNO CHAOS - The PanDaemonAeon from Templum Nigri Solis
From:
"Rebels & Devils: The Psychology of Liberation
" Edited by Christopher S. Hyatt,Ph.D.
ISBN 1-56184-153-6
それは1945年8月6日午前8時のわずか後、広島で始まった。思考不可能なものと具現不可能なものが融和し、ひとつの激変をもたらした。核分裂実験は既に秘密裏に達成されていたものの、その真実の力はいまだ世界に広く示されてはいなかった。以前には不可侵だった宇宙の要素は正確なテクノロジーによって制御され、エネルギーと物質の明確な関係性が証された。地球の倫理の守護者と目されていた「源初世界」は、完全なる慈悲深き神の名において祝福された純粋悪の使者をこの世界に送りだしたのだ。
原爆投下は多大なリスクを内包していた。一度核分裂が始まると、全ての物質の原子構造が連鎖反応を起こす可能性が検討されていた。にもかかわらず、「自由世界の守護者」を名乗る者たちはそのギャンブルを選択した。人類は、あの朝の出来事が起こるまでは神の領域とされていた完全殲滅の力を、いまや手中にしたのだ。
マスメディアによって、全地球的集合意識は永久に変革された。広島の原爆投下ーその破壊力の全貌をいまだ解明することが困難なほどの暴挙ーは、メディアと通じて「承認」された。それ以来、全てが許されているのだ。慈悲深き神が、思考不可能なものを顕現させ、具現不可能なものを物質化することを許すのならば、以降なにものも再び「真実」とは成り得ない。
原爆は人類の集合魂を爆破し、巨大な穴を穿った。眼前に現出した、人類の代表者たちによる完全破壊の脅威によって、超越者、外なる宇宙原理への信仰とそれに基づく社会的・政治的構造は蒸発してしまった。わずか5分後に起こりうる地獄、それを阻止する聖なる救済の手が間に合う見込みはない。物質はいまや人類の運命とともに究極的な制御対象となったのだ。
戦後世代は死のメカニズムから抽出されたテクノロジーによって対数的に拡大成長する社会経済を受け継いだ。新しい、加速された世界は、過剰なテクノロジー、イデオロギー、そして可能性に溢れた今日へと昇り詰めた。一方、拡大する物質的地平とともに精神的な虚無感が、新しい超越主義の形、人類の生物種的必要としての超越の探索に向かう引き金を引いた。1960年代におけるオカルトリバイバルとドラッグカルチャー、東洋思想への接近といった大規模な実験は、ビリー・グラハムと第二バチカン公会議の接近同様、この探索の現われであった。パッケージ・ホリデイからマルクス主義まで、あらゆる事物はポストアトミック社会の真空を埋めるように拡がっていったが、それらは見せかけのものでしかなかった。
原子爆弾は精神のランドスケープのみならず、伝統的な世界観の全てを覆えした。最初の大規模な核の力のデモンストレーションは、相対性理論的宇宙から量子論的宇宙への移行を宣言した。量子理論はようやく認知され始めたばかりであり、現時点ではいまだ殆どの学校がこのポストニュートン物理学をカリキュラムに組み入れることの困難さを抱えている。そうすることは、旧来の西洋的パラダイムの全体構造に挑戦することに等しい。広島以前の世界では、科学と宗教は強く結び付いていた。双方の実践家、科学者たちがそれを否定したとしても、双方間には暗黙の同盟関係が存在した。戦前の科学思想の殆どは、アインシュタインをして最後の論理的ハードルを諦めさせた「創造者/神」というアイデアを許容し、固執していた。
魔術、アートであり科学でもある魔術は、社会的に承認された思想の外部にあるという点において、権威的社会の限界に対する相対的な自由さを残している。魔術は、懐古趣味的な幻想に陥る危険と背中合わせながらも、人類の意識の進化に伴ってデータと技術を蓄積してきた。魔術の本性的な傾向とはプログレッシブ、エクスペリメンタル、アナーキックであることであり、充分な言語的ネットワークの欠如によって押し留められてきた、文化的メカニズム発現の前進力そのものとしての思想である。
魔術は、権威によっては知りえない宇宙の勇敢な探究者のマトリクスとして機能してきた。ロックンロール世代の聖像破壊によって、新しい社会は自由な魔術的視野を再発見する。それは、部族社会からマスコントロール社会に移行して以来、特権的に保護され、容易にはアクセスできなかったものだ。
支配的文化が押し付けようとしてきた制限にも関わらず、今日の我々は情報とテクノロジーに容易にアクセスできるサイバーエイジに生きている。この世界は、かつては知識がそれを望む者たちに開かれて、直接に体験することができ、あらゆるリアリティが遍在していたシャーマニックエイジの鏡像である。我々は、かつて草木を繁み恐竜を歩かせてきた神経回路ハードウェアを所有し、そして今、それを再起動させるための新しい魔術的テクノロジーを見い出そうとしている。それがケイオスマジックだ。それによって我々は、リアリティを最大限に能率的に、直接的に操作するテクニックを加速し、完成させようとしている。この新しいテクノロジーは、全ては可能であり、あらゆる想像可能なリアリティは、我々が呼吸する普く空間のサブスペースに拡がる「ポテンシア」に息づいているという悟りを魔術師にもたらす。ポテンシアは全てを内包し、制限はない。これは正統的な見解におけるケイオスであり、遍在する原初のスープである。
デーモンとはエナジー/情報の配置パターンであり、今やあらゆる配置パターンが可能である。あらゆるデーモンは解き放たれ、この真の時代精神は名前を持っている。あらゆるデーモンの時代、"PanDaemonAeon"。1987e.v.は42PDAでもある。
[List] [Archive]