Memorandum for Mists of Òran Mór [2019]
2019年12月29日、代々木ノアスタジオ で開催されたDennis, Pinoko & Madoka のShamanic Soundbath "Mists of Òran Mór" 素晴らしい体験だった。冒頭Dennisの話を思い出しながら倩と。
DennisはFeary TraditionをベースとするWitchで、カリフォルニアのWicca, Discordian, Reclaiming, Feary と Feriの多くのコミュニティに通じる超ベテラン。今や巨大な文化潮流となったウィッカ / ネイペイガン系の人は必ずしもクロウリー以降の文化史的側面を知的に把握、議論する人ばかりではないが、Dennisとの対話はスコープもデプスもドンピシャでマッチし大満足。ディスコーディアニズムをウィッカに並走するもう一つの女神崇拝アプローチと見立てる視点に我が意を得たりとニヤリ。
Traditionという語には起源が明確でないもの(過去方向にオープンエンド)というニュアンスがあるが、同時にそれは今現在の一瞬一瞬にあらゆる実践者のTraditionが始まり続けていて、現在ウィッチ文化においてはこの拡張されたTradition概念が重要。そういう今ここで生起するTraditionにあっては実践者一人一人の内的な盟友 Allies とのコンタクトが重要で、それ以降、それが第一の師となり、人間の師の重要性、親密性は第二に置かれるべき、という視点。これが20世紀以降の現代ウィッチ、スピリチュアルの大なり小なり通底する感覚であり、オウムアレルギー以降日本の大きなLost In Translationだよなぁ、と再確認。
以上がざっくり前説部分で、続いて四方天地の聖別、チャントと香水、ガラガラと羽によるクレンジングで個々の意識を整えた後、ブランケットなどに身を包んでめいめいに横たわりサウンドバス開始。フレームドラムと鈴、即興の異言歌で、大地の奥深くに入っていく。 クリスタルのチャイムとボウル、即興歌が織りなす現代シャーマンソングは、あらゆるプリミティブな伝統のエッセンスを掬いながらそのどこにも属さない、Globalとしか形容し得ないModern Shamanic Music。全ての要素がプリミティブで、かつテクノやアンビエントと共通する宇宙感覚。即興性豊かなウィッチセレモニーを、誘導瞑想とサウンドスケープで描き出していく。
横たわり各々イメージに深く没入する参加者の間を縫って、音をふりかけるように3人の奏者が歩く。途中薄目に感じる人影がどう考えても3人以上で、6,7人の「盟友たち」が歩き回るのを感じた。途中からいちいち人かどうか確認するのをやめた。あそこに歩き回っていた「盟友たち」は、個人的に見覚えがある。かつてシロシビンマッシュルームによる集団セッション時、急激に遠くなる意識を迎えにきた、形をもたない「彼ら」だ。再会。
大地の女神の胎内に深く入っていく。そこでは鉱物の星座が響き、獣や母の嗎が柔らかくさざめく。広大な子宮内に浮いているようで、笑いと慈しみが満ちていた。暖かく懐かしい。「戻ってきた」感覚。知人参加者も、私自身も涙が溢れるのを感じた。
永遠にここにいたい、地底の星座の響きをもっと聴いていたいと思うが、時間の都合もあり体感的に40分程度で、ゆっくりと日常に戻ってくる。 コンテンポラリーな美意識で鮮やかに彩られた、旧石器時代の洞窟から続くバーチャルリアリティ技術。素晴らしいクオリティだった。自身を「強いて言うならFeary Doctor」とするDennis、即興とトランスの狭間に一瞬で太古のソングラインをつかまえるPinokoの、そしてディジュリドゥを母と獣と子供達の喉と口に変容させるMadokaのアンサンブルは、急遽開催を全く思わせないパーフェクトなものだった。その完全性は、テクニックではなく意識状態、エリス的慈愛への信頼に依るのだろう。
終演後、会場外の空には蛇のような奇妙なうろこ雲が広がり、皆が空を見上げて笑った。
Mists of Òran Mór:
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MIDORIUSHI:
midoriushi.com
イベントページ:
planetarybards.net/gatherings_13.html
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