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About Contemporary Magick, 現代魔術について

バンギ・松岡デッキ 「稲荷タロット」0番 愚者

[2012]
http://tokyo-ritual.jp/videos.html#inari
http://www.tomomatsuoka.com/painting/INARITAROTNO.0THEFOOL.html

 




 タロットカードは、中世キリスト教世界の「教訓カード」や賭博・遊戯用カードの雑然とした寓意画宇宙を母体とし、エリファス・レヴィ、エッティラ、パピュスといった近代オカルティストたちが「発明」した古代の叡智を投影され、19世紀末ヨーロッパ秘密結社文化の知的サロン空間で「実用に足る」魔術的・心理学的ツールとして再構成されたものである。つまり偽装された過去、神秘化された叡智を意匠として纏いつつも、常にモダニズム的な衝動によって可視化されてきた「いまここ」の哲学的・美学的表象の78枚1セットであった。現代においてタロットの2大スタンダードである「ライダー・ウェイト・デッキ」と「トート・デッキ」は、共に19世紀末~20世紀初頭を駆け抜けたモダン・カバリストたちが監修し、当時の広告画家、挿絵画家の手によって描かれた。

 ポストモダンの洗礼を経てマクルーハン的惑星メディア環境(拡張神経系)に接続した現在、キリスト教世界の道徳的葛藤と無縁でありつつも、敗戦とハイテクによる再興、核事故という人類史的ダイナミズムを体験した現代日本人の視座から、新たにタロットの意匠をリデザインすること。それは西欧の確固たる宗教的・美学的・精神的資産をある特異点(東洋・核・戦後日本の霊的無風地帯)に投資し、予測のつかない暴騰・暴落の乱気流、カオス曲線を描き出そうとする黒魔術であり、赤の他人が無責任・無目的に執行する死と再生の秘儀として位置づけられる。

 この美学的・魔術的ハッキング・プロジェクトは、神秘家A.E.ウェイトと画家P.C.スミスによる「ライダー・ウェイト・デッキ」、魔術師A.クロウリーと画家L.F.ハリスによる「トート・デッキ」に連なるポスト311の魔術的タロット制作計画として、タロット研究/現代魔術実践家バンギ・アブドゥルと、稲荷神として再生した(否、美術家として再臨した稲荷というべきか)松岡友の共謀として2012年に着手された。

 古代宗教~ルネサンス~モダンスピリチュアリズムを通じて保存されてきた西洋の霊的資産を「混沌への投企」に投げ打つこのデッキの悪辣な意図は、サイコロの展開図による十字によって象徴されている。サイコロ十字に絡みつく蛇は北斗七星を表し、北斗は狐によって稲荷と接続される。この稲荷は西洋の霊的象徴、遣隋使/遣唐使により導入された陰陽道、仏教など大陸文化をハックし、311によって亀裂が入った戦後日本の催眠的合意現実を無慈悲かつ無目的に破壊する混沌そのものである。それは凶暴な愚者であり、その殺戮は純粋に美的であるが故に、霊的かつ現在的(Contemporary)な一撃としてあらゆる文化的・催眠的コンテクストを危機へと投企する。



「稲荷タロット0番」展示時のリーフレットより[2012]

 

 

 

 

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