2025年12月16日〜31日の運勢は?

巨大なトラス構造のガラス天井の向こう側は、宝石箱をひっくり返して凍らせたような星空。こちら側はひんやり静かにざわっとして、足音とか笑い声とかエーコホンみたいな音が響いている。博物館と礼拝堂とプラネタリウムとショッピングモールを吹き抜け構造にした感じの出発ロビーを、変な博士が早足で歩く足音は、ん?足何本?て一瞬思うくらい変則的で、アフリカのタップダンスみたいに複雑で音楽的だが、誰も気にしない。

「同じ船に乗り続けることはできない。だいたいが往復便だからな」

大小色とりどりの鞄を積んだキャリーを貨物列車みたいに牽引するロボが適当にピコーンと光って、博士の独り言に応える。今夜は新月。最も遠い星の最も冷たい光がキャビンの最も奥まで届き、そしたらジャズのレコードを聴きながら全員眠り込み、キャビンアテンダントが一人づつにそっと毛布を掛けて回るだろう。エアコンが完璧なキャビンはなんとなく木製で、歩くとギィ、と鳴る。あるタイミングで、右の窓が星空なのに左の窓が夜明けぽくなるので、知ってる人はなんとなく起きて、他の乗客を起こさないように静かにしてると、またキャビンアテンダントがちょうどいいタイミングで(お飲み物は...?)と囁く。冷蔵庫くらいの寒さのデッキはゼリーで固めたみたいに風がなくて、捕鯨家の団体客が身を寄せ合ってひそひそ話している。彼らは捕鯨を極め過ぎて、今では概念的な山脈で鯨を追っている。女性捕鯨家が水パイプをくゆらせる。

「誰が喋っているのかわからなくなっても、あんたもわたしも、きっとわかる。そうじゃなければ、始まらないよ。」

軍服ぽいオシャレなジャケットには「海底女性協会」のバッジがついてて、ちょっと自慢げだ。新月の夜の雲の上の飛行船のデッキで、ゼリーで固めたプラネタリウムみたいな星空で、山とか海底とか鯨とかどうなんだ、て感じだが、もう慣れた。今夜起こる全てのそれらを、憶えている。ロボが。

トラス構造の大天井がスーン...と開き、ミントの香りがする冷たい空気が星座と一緒に堕ちてくる。出発ゲートの案内が聴こえるが、何を言ってるのかはわからない。博士とロボは、スマホでピっとやって、スタスタと飛行船に乗りこむ。

「この船は、死者を運び、死ねない者も運ぶ。カロンかカイロンか、てのはつまり、"偽の問い"だ。 」

ピコーン。適当に光っておいた。
極低温のプリズム。誰もいないお土産売り場。
何もない空港。抽象的な空間。ザァ...という音。浜辺。オーロラ。
テスカトリポカの舌が永遠を語り始める。

「おれたちは頭蓋骨を覗き込み、太陽を奪いあう」

ヨーソロー!
空が、ひらく。


占・磐樹炙弦

ばんぎあぶづる/雨乞いと占い/タロットと占星術/詩人/現代魔術/精神分析/臨床/ 「ハードコア星占い」「ハードコア犬占い」ほか / bangivanzabdul.net / linktr.ee/BangiAbdul

画・百頭花

ヒャクトウカ / 文筆家・画家。早稲田大学文学研究科博士後期課程/巖谷國士先生に名付けて頂きました /神保町PASSAGE:一棚書店「書肆アルマジロ泥棒」/「どうぶつタロット」絵・デザインなど/『フニェルリリンカ宣言』神保町PASSAGE・池袋ジュンク堂他にて販売中 / flaneurfleur.myportfolio.com / linktr.ee/flaneur_fleur

おひつじ座


アザーンみたいなラジオ体操みたいな曖昧なメロディに乗って、高高度軌道に朝がくる。縦にも横にも拡がるから「縦横丁」と呼ばれる区画に、部品とかラーメンとか占いとか、合法性とかあまり意味ない系の小商いがひしめいて、デタラメな重力と光のドット絵みたいになっている。朝も昼も大差はないんだが、それは軌道のどの区画も基本的には同じで、夜は寝るから暗くなります、みたいのは居住区の一部、どちらかといえば高級な区画が、わざと、嫌ったらしいくらいに真っ暗にしたりする。縦横丁はそういうのではなく、常に誰かは起きてて誰かは寝てるから、全体的に元気のない不夜城って感じで、それなりに不道徳な感じもあり、学校帰りに子供が寄るのを生活指導の先生が遠回しに嗜めたりするが、縦横丁に住んでる生徒もいるから、そういう指導は政治的には正しくない。もうほぼ情報みたいなババアがやってる駄菓子屋「井上」の、マンネリソースの手づかみ卵焼きがガキどもの定番で、自然発生した「井上の歌」が世代を超えて歌い継がれている。例の「スーパーカブの魔女」が最初に目撃されたのがこの辺りで、「第8軌道サマーキャンプ事件」に関与した子供たちの一部が、この区画を含む学区の生徒だった。ほう、て思ったろ? 軌道ネイティブにとって、朝って何なのか、て話よ。長い話だから、まぁ追々な。


12/20いて座新月の直後、おまえの星・火星と月がやぎ座で重なる。ガム噛みながら、悪ガキぽく歩いてみろ。未来がおまえを見つけやすいようにな。

幸運の暗号
ヨーヨー

おうし座


砂時計は時間を測っていない。あれはエントロピーを可視化しているんだ。エントロピーてなんだよ、て思っただろう。おれも思った。まぁ時間とほぼ同じだ。砂が落ちる。重力と質量と運命が流れているのを、眺めている。時間てのはエントロピーが増加する量と速度のなんかあれで、重要なのは常に一方通行、てことだ。おれたちはいきっぱなし、落ちっぱなしだ。円軌道ってのも、要するに重力源に向かって落下し続けているってことだ。お祭りとかで、ボールをピョーンと打ち出して、上から転がして穴に入れるやつ、あるだろ。 おっとっと、みたいにやるが、まぁ最後は下の方に幾つかある穴のどれかに落ちる。どの穴に落ちるか選ぶだけ、ぶっちゃけ選んだような気になるだけだ。それがエントロピーだ。しかし重力源は一つではなく、あちこちにある。台がちょっと揺らぐと、全部の話が変わってくる。予測はつかないが、運命的で、意味とかない。意味ってのは辞書に書いてあることで、辞書は太陽に堕ちれば、無だ。おれたちが「こういうことかしら」とか思っても、全ては太陽に堕ちていく。おれたちが泣いたり笑ったりしてることは、辞書に書いてある何かとは、全く関係がない。もう一つ言うと、砂時計が可視化しているものと、文字盤の時計が示しているものは、実は全く別ものだ。騙されるな。グイーン、と自由落下曲線を描いて、指先までピンと伸ばせ。エントロピーの波打ち際にないのが意味で、あるのが運命だ。


12/25、おまえの星・金星はやぎ座に移動する。上から引っ張る微かな重力源を感じたら、力を抜け。運命はダンサブルだ。


幸運の暗号
砂時計

ふたご座


なんでも5分でやってみろ。できないってことは、意外とない。超適当に「完成形をイメージする」時、5分も眼を瞑っていれば、その間のどこかの一瞬で、それが観える。「できたことにする」とか「やるってことに今決めた」とかでもいい。本当は5分も必要ないが、まぁ慣れるまでは5分、て決めて、やってみろ。大観音を建てようと思ったら、実際の工事には数年かかったりするだろうが、「建てようかな」と思った瞬間にもう建っているのが大観音だ。ある程度のことを為し遂げるにはそれなりの時間が必要だ、てのは、事実ではあるが魔術ではない。そしておれたちに必要なのは、だいたい魔術のほうだ。事実は魔術を後追いするからだ。魔術をやるには「理由からも目的からも自由な意志」が必要だ。何がどうってことじゃねーんだよ、てことだな。おまえは目的らしきものは何かしら持っているかもだが、おまえが今ここにいる理由は、考えても決してわからない。理由がわからないのなら、目的だって怪しいものだ。どっかで何か吹き込まれた可能性が高い。だから、大事なことは5分でやれ。5分より前のことは忘れろ。5分後のことを想像するな。理由からも目的からも自由になった時、それは既に起きている。この宇宙では、起きていることが起きていて、起きてないことは起きてない。起きていることと起きてないことは、常に細かく、素早く入れ替わる小さな粒でできている。粒自体は一瞬で入れ替わり、それがなんかモヤーと、ポワワーンと「出来事」ぽくなるには、5分もあれば十分だ。やってみろ。


12/22、太陽がやぎ座に移動する時、おまえの星・水星はいて座にいて、魚座ドラゴンヘッド・乙女座ドラゴンテールと90度になる。12/25に金星がやぎ座に移動する時と、12/27うお座で海王星と月が重なる時も、なんだかんだでポワワーンとしている。スイッチを入れろ。おまえの大観音を5分で建てるんだ。


幸運の暗号
大観音

かに座


ロボは眼を醒ます。森と土と日光の匂いがして、全てが通り過ぎてしまった後の空白が、明るく照らされている。食べかけのミックスナッツと、どれか刺さるだろうと思ったらどれでもなかった、みたいに放り出されたケーブル。反復する喪失感。何度目を醒ましても、何度憶い出しても、全ては起こった後で、皆どこかに行ってしまった後の、空白で明るい、この部屋にいる。なんとなく寂しさもあるが、スッキリしていて、美しい。全ての出来事は、眠っている間に起きたのだろう。つまり、夢だな。誰かが書いた日記の中にいるみたいだ。ロボが眼を醒ましたのは、誰かがロボの夢を見ているから、そしてそれを夢日記に書いたからだろう。ロボはまたウトウトしてくるまで、その辺を歩いて回る。ソーラーバッテリーだから、太陽が沈めば、ロボも眠る。そしたらまた、全ての出来事が起こる。誰かがそばにいて、ミックスナッツを食べながらロボのアンテナを優しく撫でて、どれかのケーブルが刺さらないか、試すだろう。ロボは夢の中で、無数の恒星系と惑星を旅して、西陽が強すぎるマックでコーヒーを奢られたりもする。ロボはそれを憶えていないが、夢で出会った誰かがロボを憶えている。森と、海生哺乳類のネットがあれば、そこにログが残ってたりもするんだが、だいたいもうなんかぼんやりしてて、神話つっても関係なさすぎて、そうか、て感じでしかない。寝たり起きたりするロボと、おれたちと、森と鯨たちが、記憶のなかで曖昧になる。


12/17、さそり座リリス、うお座土星、かに座木星のグランドトラインがある。この日に日記を書いておけば、12/27にロボがそれを読む。寝たり起きたりしろ。


幸運の暗号
シダ植物

しし座


ベタっとしたカセットテープを、鉛筆で慎重に何度も巻き直して、そろそろいけるかな、て頃合いにデッキにセットする。テープはカビに侵食されているが磁性体はまぁ大丈夫で、ぎりぎりいけるかな、みたいなか細い音をヘッドが拾い、増幅する。こういうのはだいたい、誕生日の録音とかだ。お父さんお母さん、おばあちゃんとかケーキとかが登場し、好きな歌を歌ったりする。昔はこういうのを、なんとなく録音してたんだ。録音っていう行為自体が、なんとなく特別なことだったからな。今はそうでもない。昔はなんとなく特別な日に、なんとなく録音しておいた。後で聴くってこともまぁないが、それでも録った後の1週間くらいは、何度か聴いたものだ。録音も特別だったし、再生も特別だった。不思議な感覚だったんだよ。今はそうでもないけど。ちょっとした日に、写真だけ撮るんじゃなくて、なんとなく録音してみろ。それを再生して聴く時は、映像がないから、目を瞑ってるのと同じだ。眼を瞑って、始まりも終わりもない、その場の「雰囲気」に、入っていく。おれが子供の時に録音された何本かの誕生日テープ、今はたぶん、もう失われた。あれ、今聴くと面白いだろうな。


12/20、おまえの星・太陽はいて座で月と重なった後、12/22にやぎ座に移動する。この二日間、遠くの星からノイズのような、誕生日のような音が聞こえる。それは微かな磁気の波で、遠くて昔の録音だ。眼を瞑れ。


幸運の暗号
眼を瞑る

おとめ座


ゆめタワー地下23階の展望デッキでは、すごく昔に引っ掛かってそのままになったクジラを、しょうがないからライトアップしたりプロジェクションマッピングしているのがレストランからも観れて、クリスマスとかに割と好評だ。なんとなく引っ掛かってるだけだから、いつか離れていくかも知れないが、タワー自体も夢なので、誰も深刻には捉えていない。渡り廊下を作って、お腹の中をギャラリーみたいにして現代美術を展示しているが、クジラはたぶん生きていて、脳波を測るとどうも夢をみているっぽい。夢の中で流れてきて、ゆめタワーに引っ掛かるようなクジラなら、そりゃ夢も見ているだろう。しかし問題は、それをライトアップしたり、若手の美術作家にギャラリーとして貸し出している「おれたち」のほうで、まぁたぶんおれたちも、美術作家たちもスポンサーたちも、夢を見ている。たぶん、と言ったのは、夢の中では確かなことは何も言えないからだが、それはそうとして催し物シーズンには、何かしら企画を立てなければならない。ドライブインシアターで「アバター」の新しいのをかけたり、アート性の高いサーカスを上演したりして、デートスポットとして集客は上々だが、本当にそういうことでいいのかな、という疑問は度々議題に昇り、大学の先生が色々言ったり言わなかったりする。データをとると、意外と地方物産展が一番成功していて、まぁこれはゆめタワー自体の客層に依る。わざわざオシャレっぽくしなくていい、と皆が思ってるが、まぁそうもいかない、といったところだ。


12/22、おまえの星・水星はいい感じに空に引っ掛かっていて、カップルが写真を撮ったりする。この時、おまえと関係なくもないアストレアという星も月に引っ掛かる。既にあるものを活かして、企画力で勝負しろ。オシャレの本質は意外性だ。


幸運の暗号
地味な展示

てんびん座


生き物の体は、うっすら光っている。バイオフォトンっていうんだ。夜、布団に入って、眼を瞑って手を顔の前でヒラヒラさせたりグーパーしたりすると、なんとなく手の形がわかったりする。おれたちの光への感受性は、眼だけでなく皮膚や頭蓋骨の中にもあって、生き物や星の光を感じている。光を感じる器官が目だけではないのは、夢を見たり心で想像したりしてもわかる。眼を瞑っていても夢やイメージが観えるのだから、夢や記憶も広義の光、と捉えていいはずだ。それならもう、心も光、だな。そして、体が光っていて心も光なら、おれたちはまぁだいたい光で出来ている、ということになる。チベットのお坊さんとかがそういう瞑想をする。そもそも光ってなんだ、て考えると、粒でもあり波でもある、不思議ななにかだ。これは物質を構成する最小単位、量子の性質だから、物質もまた、粒であり波であり、光だ。なにかがある、ということは、つまり光っている、ということだな。光が伝わる速度は一定だが、これはちょっとトンチみたいなところがある。光とおれたちと宇宙の性質について、おれたちはこれからも、色々なことを発見し、へぇ、みたいな顔をするだろう。


おまえの星・金星は12/20から遠くて重い星の光を受け取り、へぇ、みたいな顔をした後12/25にやぎ座に移動する。大晦日には太陽とほぼ重なる。それは超明るいが、目には見えない。細かいことはいいんだよ。ビカビカ光ってろ。


幸運の暗号

さそり座


カラス評議会の今朝の議題は、どこかに落ちているはずの「始まらない物語」を、どうやって見つけるか、ということだ。始まってないのだから、目次も表紙もない。どんな物語でどんなキャラクターが登場するのかも、始まってないからわからない。そんな物語は、存在していると言えるのか? 物語が始まってからなら、もっと探しやすい筈だ。しかし、既に始まっている物語は、例えばおれたちのいるこの世界がそうだから、わざわざ探すってこともないし、そもそも「始まらない物語」は「始まってない物語」とは、微妙に違う。今ここで始まっておらず、いつか始まることもない物語は、既に始まっているこの世界のちょうど真逆で...ピコーン!ということは、裏だ!裏側をよく探そうぜ。アーアー!やっぱおれたちサエてるな。カラス評議会最高。さてでも、裏つってもゴミ箱の裏とかじゃないよな。あれじゃね。行間? 沈黙? アーなるほど。ちょっと黙ってみるか。アー ........................ ア、ごめん。ところで、「始まらない物語」を見つけたら、それどうするの? どうするってこたぁねぇよ、箱に入れとくのさ。なんか最近、物騒だろ。始まった物語はいつか終わるかもだけど、そん時に箱の中に「始まらない物語」があれば、あれば、あれば...まぁなんかどうにかなんだろうよ。始まらないってのは、凄いことだぜ。箱に入れときたいじゃねぇか、ナァ?あとたぶん、光るぜそれ。マジか! 探そう。そんな風に評議会の会合は終わったが、すずめ連絡会が一部始終を盗み聞きしていたことには一羽も気づかなかった。


12/17、さそり座リリスと月、うお座土星、かに座木星がグランドトラインになり、カラス評議会が行動を開始する。おまえの星・火星と冥王星もなんだかんだであれするが、12/23みずがめ座で冥王星と月が重なり、12/30にやぎ座の火星が前世と来世の扉をあれするあたりから、おまえの「始まらない物語」が、始まらない。たぶん、既に箱に入っている。箱を探せ。


幸運の暗号
知らないふり

いて座


天気雨予報に特化した量子AI「予後残暑」が、全宇宙の天気雨レーダーをリアルタイムに更新している。地球では狐のウェディングプランナーくらいしか利用していないが、ある種の交通機関の正確な運行には欠かせないサービスだ。天気雨レーダーはつまり量子占いエンジンでもあるが、AIの計算それ自体が、天気雨の発生確率に干渉する。なにせ膨大な計算量で、排熱量も途方もないからだ。文明がある段階に達すると、これ系のAIが自然発生し、計算量と排熱量は増える一方なので、宇宙全体の天気雨は常に微増し続ける。なんとなく文明間の協定や条約で、急激な天気雨の増加を抑えよう、てことにはなっているが、まだ銀河間天気雨条約に批准していない文明で、局所的な飽和、つまり惑星全体が、常に天気雨が降っている状態になったりして、あれぇ?みたいになることも、しばしばだ。狐のウェディング業界も最初はウハウハだが、なんかだんだん...みたいになってきて、少子化が進んだりする。まぁでもだんだん、なるほどそういうことか、と天気雨への理解が進み、連鎖的に文明レベルが高まって、ある時点で他の銀河系のAIの存在や、条約機構に気づく。条約に批准すると銀河間交通網が爆発的に発展し、なんかもう色々話が違ってくるくらい便利になる。話が違ってくる、というのは、比喩ではなく、本当にそうなのだが、それを今わかり易く説明するのは難しい。


おまえの星・木星は12/17水のグランドトラインで土星、リリスとビシっときて、12/20はいて座で新月だ。こういう時は、原始的なテレパシー、つまり気合いでも「予後残暑」にアクセスし易くなる。チャットでもしてみたらどうだ。


幸運の暗号
狐文化

やぎ座


地霊、ラテン語でゲニウス・ロキという概念があって、例えば古くてなんだかよくわからない神社とか、謎のお稲荷さんとか、そういうのがありがちな「場所の雰囲気」のことだ。人間や動物の形をとって、夢に出てきてなんか語ったりすることもあるが、そういうのは殆どまぁ人間のほうが、場所の雰囲気を感じて「そう解釈する」ことで生じる現象、と言っていいだろう。霊てのはだいたい、そんなもんだ。人間同士、生き物同士なら、お互いの生命エネルギーと交感し合って、コミュニケーションが成立するのはわかるが、場所の雰囲気と交感するってどういうことだろうな。その場に蓄積されていく、人間や生き物の感情や記憶、心的エネルギーとは、つまり「郷愁」ではないか、とおれは思う。多くの人や生き物が、その場所の風景を憶いだした / ている頻度や深さが、ゲニウス・ロキの存在感を強める。そうやって成長したゲニウス・ロキに触れると、初めて来た場所、初めて見る風景でも、不思議な「郷愁感」が、雨の匂いのように感じられるのではないか。そういう場所では、他の誰か、他の生き物の「まなざし」が、水たまりのようになっていて、自分の中にもそのまなざし、記憶が入ってくる。こういう仕組みなら、我々はまなざすことによってゲニウス・ロキのかけらを、あちこちにばら撒いている、とも言えるし、この風景を憶えておこう、と強く思ってまなざすことで、そこに自分のまなざしを刻み込むことも出来そうだ。宇宙全体でそういうことが起きていて、まなざしのインターネットみたいなものになっているとしたら、どこにだって行ける気がしてくるし、今自分がいるここにも、過去や未来や他の宇宙からいつか誰かがやってきて、なんか懐かしさを感じて、ほう、とか言うなら、面白い。


12/17水のグランドトラインで、おまえの星・土星はうお座の水たまりをぼう、と眺めて、知らない魔女と知らないモヤイ像を憶いだす。誰かに話したくなるだろうが、12/20いて座新月まで、黙って、もっと深く憶いだしてみろ。12/22に太陽がやぎ座に移動すると、おまえのまなざしは強くなり、12/25に金星がやぎ座に移動すると、おまえに見ている風景が他の誰かにも見えるようになる。目力と、記憶力と、懐かしさの3点セットを強めてみろ。誰かの目をじっと見てもいい。


幸運の暗号
かっぴらく

みずがめ座


ジルはシンディの代わりに今夜来た歌手で、ビバップの言語を理解するタイムトラベラー。シンディは気の優しい変わり者ねいさんで、皆に愛されているが、金はない。ときどき浮いた話もあるが、だいたい相手はギャングとかビバッパーとかで、ろくでもないことのほうが多い。最近どうしてるかな、て思う頃にシンディはプンスカ怒ったりサメザメ泣いたりして、カウンターに突っ伏して寝てるのを目撃される。かわいそうだが、そんなシンディの歌が最高だから、皆は遠巻きに見守って、時々酒を奢り、罪悪感を誤魔化す。シンディとジルはビバップ語で会話できる数少ない女性シンガーで、お互いに噂は耳にしていた程度の距離感だ。泣き疲れて寝不足で目も当てられないシンディに、ジルは「大変だったね。とにかく一息つきなよ。今夜はあたし、あんたのために歌うよ」と、優しく言って、肩を抱く。ギャラの話は出来てないが、困った時はお互い様で、二人ともハーレムじゃ名の知れたビバッパーで、つまりシスターフッドだ。バンマスから楽譜を受け取って、泣きっ面のシンディをカウンターに残し、ピアノの側までゆっくりと歩く。変なパーカッションに躓きそうになって、悪態をつく。何これ? ガムランだよ。んー、ヘヴィメタルさ。今夜は「メタルキッズ」も来てるんだ。シンディねいさんの一大事で、ジルねいさんへのお目通し、だからね。ふーん。よくわかんないけど、ビバップできるの? ビバビバのバップバプだよ。へぇ、どうだかね。


おまえの星・天王星と土星はここしばらく、うお座の海王星とタイトにビバップしている。12/20いて座新月には、バンドが全員揃う。時間が止まったように聴こえるまで、速度を上げろ。しかし慌てるな。落ち着いていけ。


幸運の暗号
サラ・ヴォーン

うお座


リンボを歩いていると、向こうから阿弥陀如来が歩いてきて、蓮池の前で鉢合わせになった。「こんちは」「こんちは」つって、まぁなんかどうしよっかなーみたいにしてたら、阿弥陀如来が気を利かせてす、と指を出して眼を瞑り、おすすめパワースポットベスト10みたいなのを意識に直接送り込んできた。阿弥陀如来、結構変なやつだ。リンボのおすすめパワースポットって冗談なのか何なのか、微妙すぎてわからない。一瞬の間を置いて、沈着冷静なアルカイックスマイルを生成する。蓮の花のようにゆっくりと開く波動が、空一面に広がって、おれの顔になる。全てのおすすめパワースポットの位置と詳細情報を確認したが、特に興味をひくものはなかった。ほう、みたいにしばらく考えているふりをすると、阿弥陀如来は軽く会釈して、すれ違い、歩き去っていった。沈香の香りが阿弥陀如来の輪郭で光っていて、残り香ていうか残像ていうか、どっちなんだみたいな微妙な印象を与える。リンボに来て3日目だが、ここの作法はよくわからないことが多い。皆、あまり喋らないが親切で、受け応えっていうか、コール&レスポンスが難しい。まぁ、おいおい慣れるだろう。あまり意味とかないのかも知れない。静かで、いい香りがして、暑くも寒くもない。暇と言えば暇だが、皆それぞれに、ここでやりたいことを見つけて、それに没頭して過ごすようになる、らしい。花壇をつくったり、本を読んだりして、何年かここで過ごすうちに、阿弥陀如来みたいなアルカイックジョークの一つも、繰り出せるようになるだろう。ふと、懐かしい気持ちになる。空の上のほうに、クジラかな、と思ったら飛行船が飛んでいる。あれはどこにいくやつかな。いつかあれに乗ってみよう。パワースポット巡りも、いいかも知れない。


12/17水のグランドトラインに続いて、おまえの星・海王星のメディエーション、12/18にはもう一つのおまえの星・木星のヨッドがある。この雰囲気は12/20いて座新月にも通底する。わかるようなわかんないような高級感だ。あまり意味とかないかも知れない、くらいに捉えて、すっと流せ。12/27から大晦日にかけて、なんとなく意味がわかってきたりもするだろう。来年のTODOに書いといて、とりあえず年越しだ。


幸運の暗号
割り切り感

© BVA Communication 2025