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Poetry, 詩、散文

WILD SIDE MEETINGによせて

[1999]



「友よ、答えは風に吹かれている」ーフォークシンガー

「いうまでもなく、我々はバーチャルスペースからの逃走を試みているのだ」ー1996年ハッカー会議録

「そりゃあんた、99年にもなれば世紀末なんてとっくに終っているわよ」ー友人の母

「グッモーニン、エブリワン!」ー英語教師

祭は終り、星の下荒野に火が灯る
砂、石、枯木で天幕が張られ
様々な不思議な旗章が交換される
それは野蛮で快活な市場のはじまり
旅人、商人、詩人たち
星を読み、体に荷を括り付けて運ぶ彼らは
まどろむ子供たちにいつ終わるともないおとぎ話を囁き
日の出を待ちながら綿密な旅の計画を立てている

悉くが「情報」にすり替えられた風景の中で
「情報」を集め、分配し、また回収する元締めたち
私たちが眠り、食べ、歩き、笑うことに
彼らはどんな代価を要求できるというのか
だけど、私たちは決してすり替えられることのない
私たち自身の生を生きていることを知っている
もし、あなたがあなたの悉くを「情報化」あるいは
「消費」してしまったと嘆いているとしても
大丈夫、あなたの奥底に手付かずの荒野は広がっている
陽が上り、星が巡るその大地は心の中、最奥の秘密の場所
私たちはある月と星と風の夜
そこで落ち逢おう、というのだ
そして互いの微笑みと合図を持ち帰り
私たちの街に素敵な公園と花壇とモニュメントを
何食わぬ顔で造営しようという訳だ

この私たちの場所を、隙間と呼ばせてはいけない
そこは私たちを媒介する隙間を知覚することによって
私たち自身に出会う場所なのだ、逆ではない
また、この場所を辺境と呼ばせてもいけない
そこは私たち自身が経験し、紡ぎ出す人生そのものの風景なのだから
そして重要なことだが、この場所であまり騒ぎたて、はしゃいではいけない
私たちは祭りの後の日常をこそ、確かめようとしているのだから
早すぎる、なんて心配は無用
私たちは皆、一瞬一瞬、今ここに生きている存在であり
どこか遠くに浮かぶ陽炎では決してない
何が起ころうと、それはいつも「今、ここで」起きる
さて、そろそろ、私たちのミーティングを持とうではないか
私たち自身が、生きていくこの街で
星降る夜に、お茶とお酒と歌と微笑みで
お互いのプランを吟味しようではないか
WILD SIDEは私たちを包み、広がっている


1999/02/28渋谷SPACE EDGEにて雑誌『A』主催イベントWILD SIDE MEETING VOL1に寄せた一文

 

 

 

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