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About Chaos Magic, ケイオスマジックについて

Otherkin - ポストヒューマン化するOTAKUと異種族ムーブメント

[2015]

 

90年代初頭に北米から興隆したサブカルチャーOtherkin(異種族)は、自身をエルフ、ドワーフ、ドラゴン、有翼狼などの魂が人間の身体に転生したものとしてアイデンティファイする。日本の「中二病」とほぼ重なるが、ユーズネットなどオンラインコミュニティによるハイティーン文化である。 95年のオンライン文書"Elven Nation Manifesto(エルフ国宣言)"を経て、様々な種族のコミュニティを生み、ウェブ時代以降シーンを牽引したサイトhttp://otherkin.net の2012年更新停止を以てムーブメントとしては沈静化したかに見える。
http://otherkin.net

 

これは90年代初頭のハイティーンが30-40代になる世代推移と重なる。彼らは大人になって、異種族幻想は黒歴史となって消去されたのだろうか。このムーブメントを調査していくと、どうもそうとは思えない様々な現象が、点と点が繋がるように今なお「奇妙な星座」を形成している。 今youtube上で「人魚薬」や「吸血鬼薬」のつくり方を投稿し、相互に交流している子供たち。彼らはOtherkin世代を親に持つ、いわばNative Otherkinではないか、という予感。

 

Otherkinに流入し強く影響を及ぼした文化遺伝子は、93年「マジック・ザ・ギャザリング」をひとつのピークとするTRPG、ゲーム文化だろう。原作となったトールキン「指輪物語」が刊行されたのは、現代魔女宗運動の突端を開いたガードナー「Witchcraft Today」と同じ1954年。映画「ロード・オブ・ザ・リング」は2001年に公開される。 現代魔女宗とOtherkinは、そのインスピレーションの源を同じ50年代に持ち、70-80年代にかけて密かに発酵を進行させた。90年代サイバーカルチャーへの跳躍と、Alternative Realityとしての異種族幻想を「解禁」したのは、70年代から90年代初頭に「Nothing is true, everything is permitted.」をテーゼとしたChaos Magic Movementに他ならない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ケイオスマジック

 

同人の密かな集いからシネマコンプレックスへと流出した「代替現実」は、今日ではインターネット空間それ自体に置き換わっている。「合意現実 Consensus Reality」と対峙するテンションを保ち、かつて秘密結社サロン、劇場、ギークコミュニティが担ってきた「魔術的現実」が、今やネットワーク公共圏に広く流出していることは、ネットスラング"IRL (In Real Life)"に端的に示されている。

 

Chaos Magicによる万魔殿の解放に加え、もうひとつのファクターが関係する。「日本」である。Otherkinムーブメントが生み出した亜種の一つに、Transethnicityがある。現実の人種、国籍とは異なる魂が転生したものであり、その内少なくない勢力が「間違って欧米人に生まれた日本人」という種族であった。 さらにそこから展開し、多元宇宙論を援用して、日本のアニメキャラが転生したOtakin, Otakukinという種族が興隆する。明日から旅立つブカレスト - ベルリンの旅は、ブカレストで取材するOtaku Festivalに集うコスプレイヤーたちに、この文化遺伝子がどのように関与しているのかを調査するフィールドワークとなる。

 

 

50年代ウィッカ、70年代ケイオスマジックに続くMagical Movementとしての90年代Otherkin、そしてその血族としてのOtakuとコスプレイヤーたち、その媒介となったアニメ・ゲーム文化の「奇妙な星座」を、朧げながらに指差してみたい。

 

(この記事は2015年5/30東京「第10回武邑塾: 結界の都市へ 非コモンズの前線から」でのプレゼンテーション「不在を眼差すこと - オカルティストの旅行術」の事前告知としてフェイスブックにて投稿された)

 

Twitter Logまとめ:Otherkinについて

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